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漫画の感想。

『ツーオンアイス』総評&最終回の感想

『ツーオンアイス』

逸茂エルク先生、お疲れさまでした。 一瞬の、しかし、まばゆい輝き。

総評

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まず、作品について。公式からのあらすじはこんな感じ。

峰越隼馬は、幼い頃、偶然目にしたフィギュアスケートの大会で圧倒的な演技をみせる早乙女綺更に憧れる。しかし、天才少女と将来を渇望されていたにも関わらず、綺更は突然姿を消してしまう。

――憧れの消息がわからなくなって3年後、中学3年生になった隼馬は偶然にも綺更に出会う。綺更と共に滑りたがる隼馬に、綺更が示したのは二人でペアを組むという提案。運命の再会を果たした二人の行く先は――!?

気鋭の新人作家が描く、新時代ペアフィギュアスケート物語開幕!

『ツーオンアイス』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト (shonenjump.com)

峰越隼馬は、ある日リンクで見覚えのある少女に出会う。それは幼い頃に演技を見て憧れたものの、いつしかフィギュア界から消えた早乙女綺更だった。憧れを糧に滑り続けた野良スケーターと、元天才少女がペアを組み、リンクで熱きドラマを見せる!

[第1話]ツーオンアイス/週刊少年ジャンプ新連載試し読み - 逸茂エルク | 少年ジャンプ+ (shonenjumpplus.com)

 

隼馬と綺更の運命的な出会いから始まる、「ペア」フィギュアスケート物語。ジャンルはマイナースポーツものといったところか。

こちらは、『魔々勇々』とは逆に、1話で掴めなかった印象。主に作画面。

冒頭から、主人公ペアの子ども時代の描写があったが、力不足が見えた。頭身がね。初連載ということもあり、ある程度は仕方ない部分はあるが、ただでさえ読者に引っかかりにくいマイナースポーツものを連載するにあたっては、1話で読者を引き付けなければならない。

しかも、題材はフィギュアスケート。スポーツとしての技術はもちろん、芸術として、美しくあることが評価される世界。漫画として表現する際には、演技の美しさを絵で魅せることが必要不可欠。それができないならば漫画である必要がない。が、本作の序盤ではそれが出来ていたかというと…。『メダリスト』が連載中なのも不運。読者には週刊だからといって色眼鏡をかけてはくれない。フィギュアスケートを表現するには、表現力が足りなかった。

(ちなみに184の感想はこんな感じ・・・)

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ストーリーは全編通しておもしろいと思う。わかりやすく、人物ドラマが前面に押し出されていながら、それでいて競技らしさが存分に出ている。演出との親和性もよい。何度も「演出のキラキラに騙される」と言っていたが、素材も良かった。ペアである強みというか、競技の独自性はバッチリ出ていた。

と、読めば面白いけど、読者が少ないという悪循環に陥ってしまっていた。が、後半になるにつれて絵も話も躍動。
特に、もはやもう1人の主人公と言ってしまっていいくらいの活躍を見せたのが空天雪。登場時は人を選びそうなキャラクターだと感じたが、設定の作り込みや性格が唯一無二。あまりに濃いので笑っちゃうこともあったが、25話(2024年17号)の回想は圧倒的。

また、エルク先生のクラシック(あるいはピアノ曲)の知識が試合の描写で輝いていた。フィギュアスケートという競技も相まって、半ば音楽漫画にも(タイトル回収は見事)。自分の得意分野を活かすためのテーマづくりとしてはよくできていた。

取材が丁寧なのか、ここまで素材を余すことなく、細やかな味付けに仕上げているのは明確に強みだと思う。

と、尻上がりに内容が良くなっていった印象。粗はあるが、それを相まった魅力と面白さを兼ね備えている。

エルク先生の次回作が今から楽しみ。本誌じゃないほうがいい気もする。

 

最終回の感想

空天雪。人間になりたい天雪と、芸術であるよう強いるコーチ。実際、あれだけノリノリになるなら芸術路線が向いている(しかもファンはそれを望んでいる)ので、コーチが間違っているとは言えないのがつらい。たかゆきが神の子から降りて人間になるためには、ゴミ女ちゃんを人間に戻さなければならない。苦しい。が、人間になるためにはこの方法しかないのだ。なんて深みのあるテーマなんだ。もっと見たかった。
団結。マイナースポーツならではの、全員身内。思えば、たっくん周りはトゲトゲしがちだったが、他のペアはずっと仲間だったなと。隼馬がみんなに守られていたのと同じように、読者もこの競技の純粋な楽しさだけを享受していたことに気づかされる。
銀盤に踏み出す2人。ペアだから歩幅は同じ。限りなく、明るく照らされた「道」を進むふたり。隼馬よ、綺更よ、光あれ。

最終回掲載週の全体の感想

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