184

漫画の感想。

『グリーングリーングリーンズ』1話&2話&3話の感想

グリーングリーングリーンズ』寺坂研人

 

1話の感想(WJ52号)

うーーーん。

とりあえず、絵はうまい。人体の作画に違和感はないし、躍動感も出ている。見開きの決めゴマも引き算が成功している。とにかく、絵をマイナスに感じることはないはず。読み切りからヒロインも追加。

お話。最初はお金の話をしていて、主人公・珀が読み切りと同じような性格で、同じような話の流れになるのか、と思った。184的には、「金」はゴルフに打ち込む説得力を感じるし、読み切りも面白かったし、そのままでも良かった。

連載にあたって、ゴルフへの導線、いわゆる動機を、「主人公(珀)に自分がない」ことへ変更した。より曖昧に、より強いテーマを伝えられるように、より話を広げられるように。ここにあたってはなにも不自然なことはないし、今後を鑑みれば良い調整。珀の成長物語として、読み切り版にはない味が出せる。

ただ、珀が責められる展開への持っていき方があんまり好みではない。いや、正直に言おう、ヒロインが好きじゃない!

「自分のホーム」であるゴルフ場で、自分は「持つ者」として高圧的に「持たざる者」に人格否定に近いことを暴言も交えて言い放つ。珀には反論の余地が無い。だって正論だもの。ただ、正解ではない。強いメッセージを説教臭く押し付けているように見える。珀も相手の気持ちを考えられてないところはあるが(下品は罪なりや?)。せっかく自分の生業にするであろうスポーツに興味を持ってくれた素人に向けた発言と考えると、プロの資質すら疑いかねない発言だと思う。後で謝ってたが、主人公がいいやつだったから尾を引かなかっただけだと思う。要するに、ヒロインと184は価値観が合わなかった。←ちょっと書きすぎた。ごめん。

他の難点としては、主人公に中途半端に残った「金」を気にする性格も、実際俗っぽく、今後プラスに使うのは難しそうだが(今回のように、誰かが怒るなど、ネガティブな話に転がす時に使われそう)、ゴルフというなじみのない人が多いスポーツの「相場」を知るには役立つかも、というくらい。

全体としては、リアル路線のスポーツものとして、よくできた作品になりそうな雰囲気の船出(最後の謎が才能なのかまぐれなのかはわからないが、いきなりファンタジーにはならないだろう)。少なくとも『アスミカケル』『ツーオンアイス』を食うポテンシャルは十分に感じさせる。珀がちょっとうざい代わりにすごく明るいやつなので、話もさわやかな展開になりそうで期待できる。

普通に読めば起承転結がきれいな良い1話だと思う。184にとってどう転ぶかはまだわからない。

2話の感想(WJ1号)

単体で読むと面白い。1話との繋がりを気にすると違和感。

とにかく珀がいいやつ!友達が多い。向上心もあって(ハマっただけで朝練までするか?普通)。それでいて才能もある(前話のスポーツ万能の描写、見逃してた)。コツをのみ込むのも早い。何も無かった主人公が加速度的にゴルフにのめり込んでいくさまを着実に読ませている。珀が共感しやすいキャラクターなお陰で、彼の興味・関心がダイレクトに伝わる。ここはとても良い。

一方で、端的に言うと、1話とキャラ違くない?と感じた。いいやつな部分は変わってないが、ここまでいいやつだと、なぜ今までの人生でハマるものが無かったのか、そしてゴルフにここまでハマっているのが理解できない。1話の名残は感じるが、振り切り方がね。今話だけ見たら珀の真っ直ぐさの方が際立って、賛否のあった拗ねに拗ねた性格がかなり隠れている。その性格の転換が生じた契機を前話のアレに求められると、184としては難しい話になる。そんなに前向きに物事が進むイベントでは無かったと思う。後者はともかく、前者への説得力が欠けており、珀にのっぴきならない過去があるのかもしれないが、匂わせるくらいはして欲しいな。

他のポイントとしては、水沙プロ。明らかに読者へ向けたキャラが出てきたという印象。こういうのは読んでもらうための努力として無条件に受け入れるもの。←こんな小言ぐちぐち言うまでもなく、ゴルフへの導入役として良いキャラなのでは。

ゴルフは野球(バッター)の動きと似てるから野球選手なんかが息抜きにゴルフよくやってる印象。184もバッティングセンターはかなり行ってたクチなので大学のゴルフの授業のときに空振りほとんどしなかったな。興味ない?そうですか。

当然のこととして、絵はうまい。平時はちょっとうまいくらいで、決めゴマはとってもうまい。素晴らしい。

展開はまだ打ちっ放しにいるので遅い。が、主人公の魅力と絵の上手さで固定ファンがつけば、この丁寧さは武器になる。展開を大きく持っていくことができれば世界観も広がって人気も出そう。「ジュブナイル」として主人公が悩むのも個人的には面白いが、アンケート的には物語の導線は早めに引く必要がある。

素直に面白かった。

3話の感想(WJ2号)

キャラを立てるも流れが不自然。珀がゴルフ場でバイトしてたら先輩に絡まれたというお話だが、展開が遅い。丁寧な作風から読者は多いと思いたいが、スポーツものとしてはもっと動きが欲しいところ。「青春スポーツ」ならまだ許容できるが、1話の珀が賛否両論だったので…ともかく、アクションが見たい。

キャラ立て自体は良いと思う。熱血系・萩尾。先週もどっかで言ったが、漫画なんだし「コテコテ」でも別にすんなり受け入れられる。「青春スポーツもの」としての繊細さを曇らせかねないという問題は別として。ただ、成長物語として、キャラクターに任せて勝負という展開にするにはあまりにも唐突であり、ノイズですらある。物語を動かすために出てきたキャラクターなことは明白だが、もう少し自然な展開は作れたのでは。あの性悪女に執着する意味が分からん

作中でも述べられました。珀は「いいやつ」なんだって。そうなると2話で述べた問題にぶち当たる。ここもなる早で納得のいく説明が欲しい。

総じて、歯車がかみ合っていないような印象を受けた。一つ一つはなにもおかしなところはなく、しかしうまく機能していない。

 

総評

184は1話で躓いたこともあり、少々厳しい目線になっていることは否めないが、それを抜きにしても、難しい料理を選んだ割に素材の調理に手こずっている印象はある。3話でゴルフパートに入らなかったので、それを見なければ評価できない。正直ジャンルを鑑みるなら『アスミカケル』を応援してしまう。生き残るポテンシャルは未知数。

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原型だと推定される読み切り『ゲイン』のリンク掲載。

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