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漫画の感想。

『極東ネクロマンス』1話・2話・3話の感想

 

1話の感想(WJ21号)

shonenjumpplus.com

とうとうきた。那波先生の最新作。

開幕から那波ワールド全開。開幕の「メランコリー」連呼に笑ってしまった。那波先生に求めたものがここにあった。カラーも青年誌っぽくて好き。

話は『ALIENS AREA』の忘れ物を取り戻しに来た感じ。基本的に導線の誘因など、物語の構造は一緒だが、より密度のあるやりとりによって洗練されている。

というか、那波先生こんな画も描けるんだ。死霊がバッチリキモくて異質。敵だと一目でわかる。バトルも良い。わかりやすい!ネクロマンスは人型で、武器にもなる。スタンドみたいだが、なんだかんだ召喚系はスタンドに行きつくのでこれでいい。

あと、チタリがかわいい。押さえるところは押さえるという気概を感じる。

てか、本誌62ページからの「死霊の狩り方」一連の演出がとんでもない。以下、分析。

①天涅の死霊を斬る手と、死霊の天涅に次々と斬られていく体の、効果線による動と静の対比。②四散する死霊と天涅の対比。ピントを天涅に合わせていながら、死霊の顔で天涅の顔を隠す。③無背景にチープな線で描かれた死霊の魂と、なまめかしいチタリの舌の対比。これらはスタイリッシュで読者の印象に強く残るシーンでありながら、味方である天涅・チタリの顔ははっきりと描かれない。

読者はこの一連(①~③)の流れに沿って、圧倒的な対比を受けとめながら、肝心な部分が見えないもどかしさを抱える。そして、ページをめくったとき、決めゴマの見開き、2人の顔のアップが前面に押し出されることで、それまで抱えていたもどかしさと引き換えに、かつてないカタルシスを手にすることができる。

…すごい。これが技術。

話は王道だし、絵も上手く、これ以上言うことはない。強いて言えば、やはりキャラクター先行であり、物語の推進力は先生のセンスによるものが大きいという部分が懸念点だろうか。

読み切りとは全く違う話にはなったが、前作の経験を存分に生かしているのがうかがえる。次回が楽しみすぎる。

那波先生、おかえりなさい。ん。

1話掲載週のジャンプ全体の感想

jdmgajdmga.hatenablog.com

2話の感想(WJ22・23号)

いけんぞこれ。
読んだときに真っ先に思ったのが、絵がうまくなってる!!!ということ。線がきれいになったね。たまにアシスタントに描かせた?ってくらい絵柄にクセが無いコマがあって、いい意味で新鮮だった。死霊の迫力もばっちり。(某漫画と絵柄が違う気がする…やっぱり別人?わかんないや)

話もとっても良い。物語の邪魔になりかねない問題を丁寧に処理することで、そのまま作品の強みに出来ている。

特に那波先生らしいのが、ちゃんとキャラクターに「仕事」をぶつからせる。弟子入りしたんだから、1話でそういう成り行きになったから…ではなく、職業としての「死霊術師」の難しさを、なあなあにせずキャラクターに投げかける。

(非現実的要素を含む)少年漫画の「お仕事もの」だと、あんまりここは重要視されないし、「○○だからこんなこともできる」といった職業としての強みを前面に出しがち(これはだいたいの少年漫画の作劇の共通システム――読者の分身としての主人公による、物語世界での自由あるいは権利の充実――にもつながるところだし)。

つまり、「少年漫画だから」で逃げられる作劇上の問題に対して、真正面から受け止めた回答と、その流れをしっかり描写することで、キャラクターをより立体的に表現できると共に、(ある意味での)ファンタジーではない「お仕事もの」としての魅力とリアリティを引き出している(前作でも、「外5」だからできること・できないことを真正面からキャラクターにぶつけてたし、そういうところが好きだった)。だからこそ、那波先生の漫画はちょっと青年漫画っぽい、ビターな雰囲気になるのかなあ、なんて。前作から、「架空の仕事」ではなく、架空の上にある「仕事」を一貫して描いてるよね。好き。

で、その回答も良い。読者が親しみやすい。正直前作とだいたい同じ回答だが、キャラクターの過去回想を挟んで丁寧に描写したことで、より説得力を生んでいる。あと、「戦う理由」を1話で見せたが、そのおさらいになっているのも良い。丁寧。冒頭とのつなげ方も見事。電話の適当な話に見せかけての、今週全体を通しての良いとっかかりを作れているので、作品に統一感が出る。珈琲のくだりも技あり。

…というここまでの物語の流れを、淀みなく、テンポよく見せられているのがいちばんの強みだと思う。こんだけ詰め込むと無理な展開になったり、1話と同じような展開になったりする(実際そういう漫画あったなあ)のだが、この漫画には余裕がある。作者のセンスによるものなのか。

オシャレな会話劇も健在で、文句なしの2話目。

強いて言えば、敵のキャラデザはジャンプに媚びないねえ。異形感があって大好きだが、絵が崩れてくるとこういう雰囲気も崩れがちになりそうだから頑張って欲しい。チタリは描きなれてなさそうで、ややブレがある。あと、やっぱり作風からしてやってることは地味だから、急展開が欲しかった人には物足りないかも(演出が優れているから184は大満足だが)。

書くの忘れてた。長期目標の欠如は物語の推進力不足になりがち。「お仕事もの」とは相性あんまりよくないんだけどね。なるべく早めに風呂敷を広げておきたい。

次週は天涅とチタリの「仕事ぶり」が見れそうで楽しみです。

2話掲載週のジャンプ全体の感想

jdmgajdmga.hatenablog.com

3話の感想(WJ24号)

求められているものがわかっている。

死霊術会の新キャラ一挙お披露目。キャラデザが尖りに尖る。特に丸サングラスの巨漢。『ムクテルアオイ』の照もいる。

大人たちはキャラクターとしても良い働きをしている。良き保護者としての働き。普通の漫画なら、仇討ちや復讐は強い動機となり、物語の「推進力」たりうる。『カグラバチ』はこれ一つで物語を構成するほど。そのぐらい強いテーマである。その導線をスムーズに引くなら、大人たちは仇討ちを肯定するだけでいい。新しい相棒の誕生を、先代を回顧しながら認めればいい。そうすれば、自然な復讐譚の導入が完成するから。ただ、この漫画は復讐譚ではない。

周囲の大人たちは耀司を責める。思えば、この漫画は、物語から一歩引いた問いを投げかけ続ける。このフィルターを挟むことで、復讐という目的は相対化され、本作のスタンスを崩さない。薫の回答も良い。家族へのエゴを前面に出すことで、彼の覚悟をより際立たせる。死霊のポテンシャルも十分。大人たちは薫を「宇埜」としてではなく、「ひとりの新入り」として認め、見守ることを選ぶ。ここに、よくわからない大人たちは「保護者」の役割を獲得する。

ドライブ。確かに、薫の物語は復讐譚ではない。しかし、耀司の物語は?(また名前を出しちゃうが)『カグラバチ』とは対照的な、ノスタルジックで、エモーショナルな仇討ちという「裏の物語」が示唆されることで、しっとりとした手触りをより強めている。

小道具も素晴らしい。カセットテープ。子供の知らない親の顔。浅からぬ思いを抱えながら、顔に出すこともない。複雑で深みを感じさせる耀司の態度は、まっすぐな目を持つ薫と対照的だと思った。

あと、描きなれていないであろう子供を頑張って描いたのが伝わった。いいかんじ。

(今日あんまり文章うまく書けないなあ。読みづらかったらごめんなさい。)

3話掲載週のジャンプ全体の感想   

あとで。

序盤全体を通して

まずは俺の立場と方針“ステイトメント”をハッキリさせるか。

とっても面白い。『ワンピース』や『ヒロアカ』をジャンプの「表」の柱とするなら「裏」の柱になれる逸材。好き。すごく好き。説明も作風も過不足なく存分に表現されていた、最高の序盤だと思う。

あとはバトル。設定を作り込んでくるのか、1話のように演出で魅せるのか。那波先生のビターな物語がこれからどんな風に発展していくのか、とってもわくわくしています。

競合。オシャレバトルなら枠は空いてると思う。退魔でもあり、復讐譚でもあり、お仕事ものでもあるという絶妙なバランスから、直接対決の構図は起こりにくいか。

連載前の印象 

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新連載・最終回の感想一覧

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