184

漫画の感想。

『人造人間100』総評&最終回の感想

初めに。江ノ島先生お疲れ様でした。184はこの作品好きでした。連載中にジャンプのバックナンバー読み返した数少ない作品。

不老長寿と言われる一族の唯一の生き残りである八百あしびと、人造人間最強とされる100号のタッグもの。この作品の肝は、「人造人間は人にはなれない/分かり合えない」という根幹の設定を最後まで貫いた所にある。

そもそも主人公のタッグも、あしびが18歳になったら健康な肉体を100号に差し出すというドライな契約によるもの。人造人間は「理想の人間になること」に囚われている。この目標のためには、共に過ごしてきた人間を情もなく一刺しにできる。それでいて、人造人間は心を持つ(心が無いとされるが、人造人間もだいぶ考えているので「心が無い」という心を持つ、と言っておく)。

この設定が、「一見人だが人ではない人造人間」の不気味さ、無機質さ、危うさをあしびに常につきまとわせている。『鬼滅の刃』的な、敵の悲しき過去も良い(二番煎じと言うつもりはないし、面白い)。

伸び切らなかったのは、アクションのロジックが突飛で、加入する組織の人間キャラに魅力が感じられないからだろうか(組織のバッジなど、設定が生かされていなかった部分もある)。特に序盤に顕著で、冒頭良し、終わり良しだが中身の理屈は唐突で乗りきれない部分が多かった。テコ入れであろう女性隊員2人と「火花」は感情移入できる人間(特にあしび)を前面に出して、人造人間ありきの漫画から脱却しようとするものだが、なぜか人間側にも共感しづらい作りになっていた(これは全体を通しても言える)。

さて、最終話。全体を良くまとめたと思う。作者の構想ではどうだったかは分からないが、100号はあしびを慈しむことはない。だからこそ自分のために決断を下すのだ。ただ、人には心がある。100号がいなくなって悲しむ心である。人と人造人間の対比が全般通して鮮やかだった。

江ノ島先生は人以外の心を描くのが向いている。次回作も期待しています。