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漫画の感想。

三宝の奴

西郷信綱『古代人と死』を読んだ。内容の大部分は自分には到底むつかしく、的外れな感想をつらつら書くのも具合が悪いので、ひとつだけ。

乱にて捕らえられた橘奈良麻呂は、「東大寺を造りて、人民辛苦す」と言ったが、それは単に因縁をつけただけではない。聖武帝による大仏造立と国分寺建立には大量の人が使役されたのは想像に難くない。「三宝の奴」と自らを評していた聖武が、富と力を用いて仏を興し、権勢を絶対化させようとしたのは皮肉である、と西郷氏は述べている。

仏教が大輪の花を咲かせる八世紀、仏教を進める国家ー国家に駆り出される大多数の農民。史料に残るのは上澄みのほんの一部でしかない。古代仏教受容史を理解するための鍵はここであろう。動員された役夫は、その心に何を思うか。