1話の感想(WJ51号)
これ、「ラブコメ」だ。
奇妙で悲しい宿命に振り回される、名探偵ことシド・クラフトの物語。
前評判から気になっていた「探偵もの」要素と「ラブコメ」要素の比率は、大きく「ラブコメ」に寄っていそうだ。なるほど。
話。殺人事件が起きながらも、重くならずに読めるのは作者の持ち味だろう。ここは良いと思う。シドの性格は184からしたらやや軽いが、このくらいで行かないと温度差がきついか。ある意味、「生」と「死」を往復横跳びするコンセプトなわけだし。
絵。クセはあるが、よく描けていると思う。シドの見た目が超巡にそっくりなのと、助手が初めから女にしか見えないのはご愛敬。
「観察眼」について。
おそらく、この漫画は「某名探偵」のような推理編/解決編で読者も犯人やトリックを考えられる「本格ミステリ」とは違う。作中の描写から犯人の矛盾や動機を探す、言ってしまえば「間違い探し」のような楽しみ方ができる作りになっていた。
まだ1話なのでどう転ぶかはわからないが、この構造はコロコロの大傑作『ウソツキ!ゴクオーくん』と同じで、面白いのは間違いない。
ただ、この構成を取るなら、もっと文字を少なくする必要があると感じた。本作は、「探偵もの」なだけあって状況描写や容疑者の描写が必要だし、「ラブコメ」としてのキャラの掛け合いも描かなくてはならない。
やることが多い=文字が多いと、読者は物語を追う事に労力を割かれ、絵をじっくり観察する機会を失う。その点、『ゴクオーくん』はコロコロらしくムダなくコマの大きい漫画だったので、この構造の効果が大きかったように思う。トーンや効果線を多用すると、それだけで雑然とした印象になりやすい。ここら辺の要素をおさえて、すっきりした画作りを心がけて欲しい。
また、長期連載になるとマンネリが生じやすい構造でもある。しかも週刊で仕掛け作りも大変。まあ、「探偵もの」を選んだ時点で大変なのは確定しているが……。
総じて、構成もコンセプトも良いが、要素がそれぞれ独立している印象。文字が多いのは「探偵もの」だからだが、ページ数を費やしたほどの効果は発揮できていない。単純にラブコメで戦うとなると探偵要素が圧迫してくる。
どうにかして二つの要素がかみ合ってくれないだろうか。
競合、始まったばかりでキャラ魅力が出ていないのでなんとも。来週の話の作りを見てから判断する。
1話掲載週のジャンプ全体の感想
2話の感想(WJ52号)
停滞。
特に1話と変わりばえせず。ただ、やはり探偵要素とラブコメ要素が中途半端になっている節がある。
特に探偵要素は、ヒントのコマが小さくて目に入らないし、謎解きのカギになったのは架空の地名。これだと費用対効果が著しく悪い。ちょっと厳しい。コマ割りもセリフももう少し見やすくするべき。まあ、完成系は『ゴクオーくん』だが、コロコロ向けの単純なストーリーがあったからこその強さだしなあ。
一方で、ラブコメ要素は順調。弟子の掘り下げは丁寧かつ意外性がある。この調子で二人のヒロインを描いていけば、良い空気感が出てきそう。
ただ、やっぱり停滞している感じがする。
競合。徐々にラブコメに寄せていくなら勝機はありそう。ただ、『アオハコ』が傾いてきたタイミングで見事に『ひまてん』が実力を見せている現状、厳しい戦いになりそうだ。
2話掲載週のジャンプ全体の感想
3話の感想(WJ1号)
言うこと変わらず。
やはり警部の掘り下げ回。詐欺師の輸送中にトラブル発生。変装の達人を看破して一件落着。ついでに警部との仲も深まる。
ただ、今回のラブコメ要素は推理と関連していたのが良かった。警部に化けた変装を見抜くことで、警部を紹介。展開も自然で、キャラクターも躍動している。よく考えた。
探偵要素は……ファンがやればいいんじゃないかな。間違い探しレベルでコマが小さくて、誘導も何もないため、読み飛ばしてから種明かしされても何も思わない。
ラブコメとして読むべし。
3話掲載週のジャンプ全体の感想
序盤の感想
ラブコメ戦国時代に突如放り込まれた新勢力。探偵ものとしては△、ラブコメとしては〇といったところか。さすがは経験者、展開やキャラクターは安定していて、確かな実力は感じさせる。
探偵ものとしての楽しみ、推理や犯人当てはともかく、観察眼ゲームとしては厳しいものがある。『ゴクオーくん』の完成度の高さを改めて認識した。
ただ、やはりキャラクターは良いのでラブコメ適正は高い。ここから良いキャラクターを出していけるかが勝負のカギを握るだろう。
連載前の印象
新連載・最終回の感想一覧