『白卓 HAKUTAKU』石川光貴
- 1話の感想(WJ43号)
- 1話掲載週のジャンプ全体の感想
- 2話の感想(WJ44号)
- 2話掲載週のジャンプ全体の感想
- 3話の感想(WJ45号)
- 序盤を読んで
- 3話掲載週のジャンプ全体の感想
- 連載前の印象
1話の感想(WJ43号)
やっぱり変な漫画が来た。
前評判で触れた読切からしても、今のジャンプにはなさそうなカラーの漫画を描く作者さんだと思ったんだけど、案の定、想像以上に癖のある漫画だった。
表紙&巻頭カラー。平成中期の新連載と言われても信じるくらい、時代を感じる塗りとキャラデザ。一周回って新鮮味があってこれはこれで。
ヒロイン。予告絵では気づかなかったが、お前、女かい!確かに予告絵もよく見たら女性である。白髪三白眼オーバーオールベルト黒シャツネクタイ俺っ娘……要素を盛りまくってて、てっぺんまで見えなくなるくらいには攻めている。ニッチな所を狙い撃ち。いいね。のわりには深堀りされていないので、今後に期待。
絵は、予告絵で不安がっていたが、しっかり描けている。そんなに破綻していない。まあ、キャラデザというか、あらゆる雰囲気が古い感じはするが。
さて、お話。まあこんなもんかな。
主人公・日隈は自分の世界に入るのが得意で、いじめられてるのにも気づかない。そこに不登校のヒロイン・能登が登場し、ゲーム制作によってクラスメイトを見返し、脳汁によりゲーム制作に目覚める。
まあ、テンポも遅くはないし、やりたいことは出来ていると思う。
ただ、制作過程は見せないんだ。意外。
ジャンプの「創作もの」で記憶に新しいのは『テンマクキネマ』だが、この漫画は目線がクリエイター目線で、映画制作の基礎とかテクニックを軸に話を進めていた。本作もそんな感じで進めるのかと思ったら、物語優先というか、登場人物の心情や成果物に着目する形になるのかな。
これなら、ゲーム特有の制作過程を描写する必要がなくなる。突っ込まれると面倒なとこだし、それでもいいがゲームである必要がそれだけ薄くなる。一長一短。
さて、懸念点。
センスが古い。てか、くどい!題材がニッチでやりずらいものを選んでいるのにもかかわらず、更にとっつきづらい作風。読む人を選ぶというか、読み手が試されるというか……。
184の感想ではあるが、決めゴマの「脳汁」シーンは4頁使ったわりには効果がいまいち。該当シーンの背景や脳天直撃の演出は、まんま30年前くらいのセンスで、2024年に読むと滑っているようにも見える。本編もうっすら滑っている部分が散見される。このノリを読者が受け入れてくれれば良いのだが……。
あと、粗を探すといくらでもあるのがね。展開はやや強引。学校の授業で3週間もゲーム制作してるのはご都合に見えるし(今の子にとって普通ならごめん)、学校に泊まり込みでゲーム作るのを先生が許可しているのも不思議。
また、今話での問題点としては、選んだゲームのテーマが内輪ノリなところ。
『ショーハショーテン』でも出てきたアイデアではある。確かに、仲間うちのノリは、内輪の中にいればそりゃ面白いのは前提として、「読者」は1話時点ではまったく「輪の外」にいるんだよね。だから、「この作品は作中作が面白く描けるのか」という、「創作もの」のクオリティーを左右する大事な要素を評価するレベルにそもそも達していない。
作中の描写で言えば、作ったゲームの面白さに対して納得感はあれど実感は無かった。掴みが大事な1話で、肝心のゲーム部分が面白く見えない題材を選択したことは、大きく響くのでは。
上述した「制作過程の省略」も併せて、1話時点で「ゲーム制作である意味」が全く見えないので、なる早で回答が欲しい部分。
……振り返ってみるとネガティブな感想が多くなってしまったが、184としては結構楽しみな新連載だと思っている。
題材も意欲的で、主人公の心情は丁寧に描けているし、ここからの話の展開は全然読めないし。うまい風呂敷の広げ方があれば、ゲーム制作という題材も読者の想像以上に光ってくれるのではないだろうかと。粗は目立つが、独創的な作風でどうジャンプを荒らしていくのか。ここには期待している。
競合。特にない。とりあえず、熱狂的な読者層を獲得するところから始めるべき。
1話掲載週のジャンプ全体の感想
2話の感想(WJ44号)
内容はいい感じ、でもところどころ怪しい。
今週は学校から抜け出して能登の家へ、そしてゲーム作りを持ちかけられるところまで。
お話。かなり真っ当な内容。そりゃ、クラスで孤立気味のやつが、キツめのいじりが入ったゲーム(しかもかなり手が込んでる)をお出ししてきたら、ちょっと引く人はいるだろうし、純粋に楽しんで応援してくれる人もいるだろうし。
そして、今回のゲームを共に作った能登が、自分の目的を日隈に持ちかけるのも当然ちゃ当然。 絵はそんなに気にならない。むしろ、能登の部屋なんかは、「散らかっているように見えるが、物が多いだけの部屋」のニュアンスが伝わってきて、こだわりを感じる(1話冒頭カラーでも確認可能)。
まあ、演出はひと昔前で古っぽく、人物もそれにやや引っ張られている節は感じるが。
キャラクター。能登にハマれるかで、この漫画の印象が決まると言っても過言ではない。プロフィールというか、個人情報は明らかに日隈より開示している。その上で巧みに父親の情報はぼかされている。今後に関わるか。
というか、残り2機って。全日制高校は6年まで通えるっぽいので、能登はいま入学2年目か(入学4年目とも解釈できるが、それだと2回留年「は」できるが卒業できなくなるし、流石に同級生で4コ上のヒロインは無いだろう)。
1話本誌(電子版)30頁で日隈が「入学してから」と言っていること、31頁での能登の「来なきゃしゃーねぇみたいでなぁ」の発言から、日隈は高校1年生の可能性が高い。つまり、能登は1回留年していることがわかる。
……そんなのあり?「年上同級生ヒロイン」というキテレツ属性が付与された瞬間である。刺さる人には致命傷になっていそうな属性の詰め合わせ。信仰が生まれそう。ちなみに184はこの魅力、結構わかるほう。
……それはともかく、不安な点があるのでそれをいくつか。
まずテンポ。先週「遅くはない」とか言っといてアレだが、このヒキだと話が変わってくる。 ここまで来たなら、せめてタッグ成立くらいまで描いてから〆るべき。
来週返答で2〜3頁ムダにするならまだ良いが、これで日隈が「考えさせて」とでも言った日にゃ危険信号が灯る。そんぐらいジャンプの序盤は大事。ただでさえニッチなジャンルだし。
つぎ、コンビの役割分担。能登ができること、日隈ができることがわかりづらい。なんかバシッと一言で表したかった。ゲーム制作はそこらへん「プランナー」とか「デザイナー」とかきっぱり言える役職は揃ってるのに。
加えて、細かいことだが、これまでの描写を見る限り、ゲーム内の絵や音楽は自作してるっぽい。が、そういったゲーム性以外の部分が自分でできるって、相当な実力が無ければ出来ないと思うのだが(たとえ「キモチワルく」する作用ひとつとっても)。
ここで怖いのは、初めからこんだけできるってことで、成長の余地が乏しそうなところ。出来ることが増えていく過程は、どのジャンルでも楽しいこと。「キャラクターが成長する楽しみ」も十分に活用する流れになってほしい。
来週の1頁目が明暗を分ける。気がする。
2話掲載週のジャンプ全体の感想
3話の感想(WJ45号)
まあ、いいか……?
注目の冒頭1頁。まごまご。ここは想定内。間髪入れずに商店街からミニゲーム制作の依頼。日隈も乗り気で、唐突ながら疾走感はある。
能登の人脈。インターネットのつながり。こういう事ができるからこそ、先週は一言で言い表せなかったのだと納得。まあ、強引だが。
作ったミニゲームも詳しく説明されており、読者から見て面白いかはともかく、作中で人気になる説得感はある程度理解できる。
〆の回答もかなり真っ当で、青春しているなあ、と。お話に関してはなんだかんだ順調に進んでいる。
演出。これは……。『キルアオ』の悪いところをそのまま引き継いだ感じ。はっきり言って、電機屋さんの上滑りしたコメディはかなり嫌い。藤巻さんのアシスタント経験があるのかってくらい似ていて良くない。そもそも、『キルアオ』自体かなり落ち目だし。このノリはウケないと思うし、184にも刺さっていない。
「脳汁」も微妙だなあ。どうしてもゲーム制作の動機が自分に向く。それ自体は結構なことだが、最後までこれを貫くのは厳しい。どこかで動機を綺麗に移行させる必要があるのだが、そんな余裕あるのかなあ。あと、単純に演出として優れていない。「脳汁」ってあんまり感覚的じゃあないし、絵で見て楽しいものでもない。
序盤を読んで
本筋は意欲的かつ、脇道に逸れない作りで応援したくなる。テーマは変化球だが、話は真っすぐ。大きく見れば、展開的にはありそうなところを踏みつつ、能登さんの魅力を武器にできているか。
演出面はだいぶきつい。このノリがどこまで歓迎されているか(『キルアオ』と競合)、どこまで修正できるのか。
次のエピソードがかなり良ければ一転できる。とはいえ、このテーマだと、新キャラのハードルはかなり高いと思う。風呂敷をうまく広げられるかにかかっている。
競合。わからない。明日はどっちだ。
3話掲載週のジャンプ全体の感想
連載前の印象
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