『しのびごと』 原作:たけぐし一本 作画:みたらし三大
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- 1話掲載週のジャンプ全体の感想
- 2話の感想(WJ43号)
- 2話掲載週のジャンプ全体の感想
- 3話の感想(WJ44号)
- 3話掲載週のジャンプ全体の感想
- 序盤を読んで
- 連載前の印象
1話の感想(WJ42号)
既視感に次ぐ既視感。
話としては、前情報に違わず、コメディ色の強い「エージェントもの」。国家組織に所属する忍者の少年・ヨダカが、権力に狙われる女子高生・向日アオイを護衛する話。
絵。親しみやすく、キメるところはキメられる、実力を感じる絵。バトルにもラブコメにも行けそうな、幅の広い絵だと思う。
話もわかりやすい。単独任務ではなく、あらかじめ仲間の忍者も潜入してあるうえ、指示役が全部説明してくれるのが(どっちにとっても)親切。任務自体も単純ながら、3年の期間といい、その難易度が高いのも頷ける。
3年で「”親友“”恋人“まで親密になる」と、ここまでヒロインの人間関係を身内で固めようとしているのは仰々しくおもしろい。
コメディ要素(特にヒロインのやつ)も、けっこう独特のシュール系で、刺さる人には刺さりそう。会話がいちいち変で、なんかおもしろい。ここは前作でも評価されていたらしい。展開に水を差すようなコメディではなく、ちゃんと武器になるコメディが描けている。
さて。既視感その1。「エージェントもの」というジャンル。(これまで、「殺し屋もの」とか「スパイもの」とか言ってたが、全部まとめて「エージェントもの」で。)
ジャンプ本誌には、このジャンルの作品が『キルアオ』『SAKAMOTO DAYS』『夜桜さんちの大作戦』と既に3つある。最終決戦を絶賛行っている『夜桜』、バトル漫画として秀逸な『サカモト』はともかく、『キルアオ』とかなり読み味が似ているのが気になるところ。バトルの描写も似てる気がする。
(そもそも、世の中にこのジャンルの漫画(特にジャンプラの読切!!!)が多すぎてちょっと飽き気味になっている側面がある。これは184が漫画ばっかり読んでるせいかも。)
この漫画が、部活に入って、刺客と戦って……という、ある程度ベタな路線を進むとなると、全て『キルアオ』でやった展開になってしまう。学園ラブコメ展開も、『ひまてん!』との真っ向勝負となり、どうやっても他作品と比較されやすい位置にいることになる(書いている途中、もう作中に恋人役が出ているのに気付いた)。
つまり、「エージェントもの」としての独自性と、ジャンプ内で埋もれないための独自性、この両方出していかなければならない。学生生活と任務のギャップなんかはかっこよく表現できそうな設定なので、そういうところで見せ場があると嬉しい。
その点で気になるのは、「忍者要素」ありましたっけ。学校に潜入するのを「忍者」って言うなら、まあそうだけれども。恰好も普通に学園もの、戦闘時に忍術を使うわけでもなく。せっかくの1話にしては、地味な感じがして勿体なかった。今後に期待。
既視感その2。主人公の性格。『キヨシ』じゃん。強いけどコミュ障な主人公が学校に入学。全く同じだし、ここまで被ると、続けて読んだときにちょっとくどいと思う。
そもそも、この設定って主人公が行動するときいちいち時間かかって面倒だからコンセプト自体どうなんだろうって思ってしまう。
……てな感じで、現連載陣と被る要素が多いのが気になる。正直、184はかなり気になった。まあでも、編集部がGOを出しているということは、大丈夫ってことなのかなあ。
全体としては、会話の面白さと設定のわかりやすさが光る、読みやすい1話だったと思う。
テンポも悪くない。主人公の見せ場も作りつつ、今後いくらでも話が広がるような、ベタで癖のない作りになっているところにも巧さを感じる。前作は読んだことがないのでどうだったかは知らないが、けっこう良さそうなスタート。
今後は、他作品に埋もれないような独自性をさらに高めておきたい。
競合。『キルアオ』『キヨシ』と殺し合ってください。以上。
1話掲載週のジャンプ全体の感想
2話の感想(WJ43号)
なんか、ちょっと。
今週はトラブルがありつつも、ヨダカの能力を見せつつ護衛対象・アオイと仲良くなった。
あんまり先週と印象が変化しない。良くも悪くも。
オペレーター9号やヒロインとの会話は健在で、一定の面白さがあって良いところ。ただ、先週と同じようなやり取りなので、そんなに書くことがない。
絵は結構うまいと思ってたが、バストアップの構図、それも同じ表情のシーンが多いから、なんか飽きた。書き分けはできてるが、表情は似てるから絵的な面白さが乏しく感じた。2話でこうなっちゃうと、これからどうなっちゃうのって感じはする。
決めゴマ。ヨダカの本領発揮シーン。構図、動きは意欲的で丁寧に描けてはいるが、もうこういうのは『サカモト』で慣れちゃった感がある。特段の強みにしていくには、これから大変だろうなあと。お弁当を粗末にするなんて!
あと、いま文章を書くなかで気付いたが、ヒロインの名前が今週1回も作中に出てきてない。というか、先週の同僚忍者は姿すら出てこない。むかし、キャラの名前を呼ばないで失敗した『ALIENS AREA』という漫画がありましてね……。とにかく、読者が名前を覚えられないキャラクターはどうしても印象がぼやけるので、そこらへんも上手くコントロールしてほしいなあ。
正直、会話もあんまり刺さってないので、184としてはそこまではまりきれてないかなあ。
ただ主人公の成長幅が大きそうな物語なので、回を追ってそこらへんが面白く描ければ違った魅力が出てくると思う。
来週で話がどう動くか。
2話掲載週のジャンプ全体の感想
3話の感想(WJ44号)
ごめん。おもしろい。
今週はカラオケ回。本作の土台になったであろう読切の後半も、こんな感じでカラオケに行ってたな。
お話。素直に面白い。ヨダカのネガティブ思考が、そんな訳ない方向へズレてるところにギャップを感じた。 一般人に扮した刺客を忍者三人衆が協力して返り討ちにする展開も、ベタながらバッチリ。
今回特に良かったのは絵とキャラクター。 今考えると、前回はメイン2人+モブしか登場しなかったのでやや単調な印象を受けたのかもしれない。
同僚忍者2人へのフォーカス+カラオケ店へと舞台が移り変わったことが要因だろうか、絵については全く気にならなかった(顔の輪郭がみんな同じなのは、まあいいや)。
むしろ忍者たちの、学生モードと護衛モードのギャップを絵によって上手く表現できているところがすばらしい。特にヒバリ。バーサーカー中の作画は迫力があり、キャラとしての印象がかなり良い。魅力たっぷり。
アクションも悪くない。同系統の演出が『サカモト』『カグラバチ』と被っているのはやや痛いが、このぐらいのバランスならば(アクション過多にならなければ)、普段の奇妙な会話劇とのメリハリがついて効果的。
シリアスからコメディへの移行も技が光る。
全体としてきれいにまとまっており、言うことなし。
3話掲載週のジャンプ全体の感想
序盤を読んで
正直、最初読んだときはピンとこない漫画だなあと思っていだが、3話でポテンシャルを感じた。クセはあるが良い空気感の話と、堅実な絵。ホームランを狙うというより、ニヤニヤできるような中堅への適正は十分に感じる。
ヒロイン+忍者三人衆はかなり減点が少なく、それぞれの掘り下げを順調に進めれば安定したクオリティは出せると思う。あとは新キャラか。魅力的な敵を1人でも登場させられるのなら、良い線いくかも。
競合は特に変わらず。勝てそうじゃね?このままいけば。
連載前の印象
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