寺坂研人先生、お疲れさまでした。
まず、作品について。公式からのあらすじはこんな感じ。
やりたいこともなく、ぼんやりと高校生活を送っていた八枝崎珀。将来に向けて真っすぐ歩み始めた友達との温度差も感じ始めたとき転機が...ゴルフのプロを目指す王賀撫子と出会い、空虚な日常が変わりだす。さあ、新しい自分を見つけに――。新感覚ゴルフ青春譚、開幕!!
あらすじのとおり、青春系ゴルフ漫画。
この記事を書くにあたって改めて自分の記事を読んでみたが……まあひどい言いぐさ。まあ書いた本人なので展開についてぐちぐち言いたくなる気持ちは理解できるが、そこまで言わなくとも。
・悪夢のドラコン
184の難癖はさておいて、この漫画が満場一致でつまずいた部分は、3話くらいから始まったドラコン対決だろう。
熱血・萩尾くんと主人公・珀を中心にドラコン対決をするのだが、萩尾のキャラクターも、導入もテンプレ的で、本作で評価されるような繊細さが全く欠けている。編の展開も予想の範囲内で、特に面白みもなかった。演出は良かったが。
しかもドラコン。つまり、ホールは回らない。打ちっ放し→ドラコン→実戦の流れは初心者には(つまり珀にも読者にも)丁寧な作りだが、ジャンプスポーツ漫画においては展開が遅いと言わざるを得ない。実際、ここで多くの支持を得ることができていれば、オリバー編の出来ならば浮上していたかもしれない。
・主人公のゴルフとドラマのちぐはぐ
オリバー編以降は、王賀やオリバーといったサブキャラに魅力があって、良い青春ドラマにはなっていたと思う。しかしその一方で、作劇上のもったいなさは全編を通してあった。
この漫画で主に評価されていたのは「青春パート」であって、そのやり取りは話し合いであったり、拍がキャディとして人のゴルフを手伝っているときに生じた物語である。それは、決してゴルフを中心に組み立てられていなかった。つまり、大事なシーンに、珀のゴルフが存在しないということである。
それゆえに(だからこそ)主人公の活躍が少ない。序盤を読めばわかる通り、主人公には丁寧な心理描写が積み重ねられている。それなのに主人公の見せ場があまりにも少ない。これはもったいなかった。ただ、こうなってしまうのも必然で、なぜなら珀と王賀・オリバーらサブキャラにはゴルフの実力があまりにもかけ離れている。初心者の珀のプレーが彼らの問題を解決するのは、リアリティ路線を追求するこの漫画にはそぐわない。ということで、この構造を打開するのは難しかったかな。
その他で言えば、作画も、ゴルフの演出はきれいだった。が、平時の人物(というか顔面)の描写が怪しい。たまに目が怖い。普通に読んで違和感のある部分があった。
また、やはり、珀の性格を持て余している。1話のお金好き描写はそこから一切活用されず。読み切り主人公の性格を引き継いだと思われるが、こちらはお金の臭いなどしない純情青春路線なので、あのシーンだけ浮いている。というように、珀の熟練度設定なんかも含めて、やはり序盤の作り込みがやや甘かったかなあという感想である。
尻上がりに評価されていた漫画なだけあって、ここ最近は結構面白く読んでいたが、まあ打ち切るならこれと来週のくらいしかなかったというのはある。中堅の層が厚かったのも向かい風だったかな。
それでも、作者さんのゴルフ愛はしっかりと伝わった。
最終回の感想
さて、最終回。二人でクラブの新調。の帰路。雨。「濡れるのも半分こ」「濡れないのも半分こ」。ここら辺は序盤の積み重ねがあってこそ活きる良いシーン。
珀のスイングは王賀のコピー。だからこそ珀に合うクラブが薦められた。ここも関係性が丁寧に積み重ねられているからこそのシーン。
試したいことはたくさんある。失敗もたくさんするだろう。そうやって少しずつ成長していくのだ。ゴルフだって、挑戦したからこそ手に入れたものの一つだ。だから、挑戦する。そうやって、珀たちは大人になっていくのだ。そういう意味で、これより始まる。
1話の珀と対照的なモノローグ。1話で提示した回答としても秀逸。全編を通して描かれた、さわやかな雰囲気とメッセージが存分に感じられた。
最終回掲載週の全体の感想
連載決定時の感想
序盤の感想
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